酒蔵奉行所
伝説のビール会(究極のトラピスト・ビール特集)/前半
前半後半
主 催:酒蔵奉行所
日 時:平成15年5月24日(土)
     午後2時〜
会 場:酒蔵奉行所川崎支部
     (川崎代官所)
参加者:奉行・与力・川崎代官・鴻巣同心・八州回り・製造技術部長、ベティさん、あたまじゃくしさんほか、計11名

酒蔵奉行所第2回目のベルギービール特集。今回はトラピストビール特集である。トラピストビールの解説については、別項を参照して欲しいが、レア物、ヴィンテージ物など普段飲むことが出来ないビールなども準備し、一応、トラピストビールを網羅したビール会となった。
 特にシメイは1994年から2003年までの10年間を垂直テイスティングするという企画であり、「こんなことがことができるのはベルギーでもクルミナトールくらい!」「日本でこんなことができるなんでうそみたい」「きっとこの会は伝説になるに違いない」との声もあって、今回のビール会のタイトルを「伝説のビール会」としてみた。
【進行状況1】
 最初の乾杯のビールはオルヴァルである。状態がよくフレッシュ。苦味が個性的なビールでファンも多い。奉行はちょっと遅れて到着。次のビール、シメイ・ブルー(Grande Réserve)マグナムの1999年と2003年の2本が無謀にも開栓されており、すでに半分以上空いていた。アルコール度数9度の強いビールである。「では比較ためにこれを!」と奉行がバッグから取り出した物は、シメイ・ブルー・マグナムの1996年物。一同「うっそー」「すごい」の驚きの声。昔はボルドー型の瓶であったが、今はシャンパン型。最初に空いたのは1996年マグナムであった。
 シメイ・シリーズどんどん行きましょう。シメイ・ブルー大瓶1997年2種と1998年。1997年の途中までは、大瓶のラベルの色は黒。さらに、古いヴィンテージの登場。1994年、1995年、1996年の大瓶。
 小瓶も一同に並べる。1994年、1995年、1996年、1997年、1998年、1999年、2000年(ラベル2種)、2001年、2002年。マグナムの2003年を含めると、1994年から2003年までの10年分の垂直テイスティングが実現した。これをやりたかったのだ。
 「あれ〜、1997年のヴィンテージは年号が金色じゃなかったの?」との質問がでました。「そのとおり、正規代理店物は金色です。(ちなみに1996年も同様)」
 「何年からラベルにスターチ使用の記載があるんだっけ」「1998年からヨ!」などの会話が飛び交い、皆順番に香味を確認して印象をまとめる。
 1994年と1995年、1996年あたりまでは若干の老ねた香りとまろやかな熟成感がありバランスがとれており、好感。特に1996年は小瓶、大瓶、マグナムと3種あり、とくにマグナム1.5リットルには、容量の多さにメリットでゆっくりと熟成したという安定性と深みが感じられた。
 「ん〜?。代官あけちゃったの?」という声で気が付くと、3リットルのジェロボーム瓶が開栓されていた。2003年のジェロボーム。さすがに重い。フレッシュだが、まだビールとして完成していない感じ、相当期間の熟成が必要と思われた。でも、最後にはしっかり空いていました。
 ほかのビールを飲みたいとの声も無視して、「ここまできたらとりあえずシメイを全部出しましょう」ということで、シメイ・レッドとシメイ・ホワイト(トリプル)も追加。レッド(大瓶・小瓶)はここまでブルーを飲んだあとではコクが劣りかわいそう。ホワイトは、スパイシーで、口直しにちょうどよかったかも。
(後半に続く)














料理にも惜しげも無くビールを使う 製造技術部長による手作りピザ
◆講 評◆
銘柄 印象
ORVAL
1 Orval
(6.2% 33cl)
 非常にフレッシュ。今回のトラピスト特集では唯一無二の味わい。ドライホッピングによるホップの強い個性が味わいを支配している。最近輸入のオルヴァルはリーファー輸入なのであろうか、状態がよい。
 私は、熟成してまろやかになり、ホップの味わいも落ち着いたころのオルヴァルの方が好みかもしれない。
CHIMAY GRAND RESERVE MAGNUM
2 Chimay
Grande Réserve
Magnum
Millésime 2003

(9% 150cl)

 シメイは2000年の途中から新ラベルに変更されたが、確認する限り、マグナムに新ラベルが使用されたのは2001年ヴィンテージから。
 大瓶や小瓶の2003年ものはまだ店頭で見ていないが、マグナムやジェロボームといったものから先に新ヴィンテージが出現したのは、例がない。
 2003年はさすがに若い。まだ、シメイ・ブルーとしてビールがまとまっていなく、成分がバラバラといった感じ。各種成分が有機的に結合してバランスがよいシメイになると思われるが、あと何年かかるのであろうか。
3 Chimay
Grande Réserve
Magnum
Millésime 1999

(9% 150cl)

 マグナムのボトル形状がシャンパン型になったのはこの1999年から。旧ラベルは2000年マグナムにも使用されている。
 なお、ヴィンテージ・シールが貼られるようになったのはこの1999年からである。
 コルクには1999年12月の記載が有る。ちょうどよい熟成期間を経てバランスがとれた味わいになっている。
4 Chimay
Grande Réserve
Magnum
1996

(9% 150cl)

 ボトルにはヴィンテージの記載はないが、コルクに1996年8月の記載、味わいに若干の熟成感があり、深みやボリューム感があり、素晴らしい。
 大瓶のラベルにヴィンテージの記載があり、マグナムにはないので、修道院を訪れた際その理由を尋ねたが、回答は、「マグナムは1本1本カートンに入っており、箱の印刷と中の瓶のラベルのヴィンテージが異なったときに苦情がくる。もしヴィンテージを入れれば箱と中身のチェックにコストがかかるため。」「マグナムでもコルク栓にはヴィンテージが入っているから判るはず」ということであった。※詳しくは第3回ベルギー王国ビール探訪記を参照
CHIMAY GRAND RESERVE
5 Chimay
Grande Reserve
1998

(9% 75cl)
 1998年は、今回用意した大瓶で最も若いもの。といっても5年間の熟成感たっぷり。コルクには1998年8月とある。
 17番の1998年小瓶と比べると、同じアルコール度数とは思えない。別物のように濃くて、深みがある。「1998年前後からシメイの味が変わった」という説があるが、1998年の大瓶はまさしく昔の堂々としたシメイ・ブルーの味わいであった。
6 Chimay
Grande Reserve
1997

(9% 75cl)
 コルクを見ると1997年の青ラベルには1997年5月の文字がある。(1997年の黒ラベルは1997年3月)
 ラベルが青くなって、やっと「グラン・リゼルヴ」を「シメイ・ブルー大瓶」と呼べるようになった。
 2ヶ月の醸造の違いであるので味わいの変化に大きな違いなくどちらも深みがあって美味しい。
 ビールは年1回醸造のワインと異なるので、年何回も醸造を繰り返すシメイ・ブルーのヴィンテージにそのヴィンテージの特徴を見出そうとしてもそれは不可能である。ただ、醸造時期が特定できるので、おおまかな傾向は推測できる。
7 Chimay
Grande Reserve
1997

(9% 75cl)
 コルクには1997年3月。
 以前は「シメイ・ブルーの大瓶は、ラベルが黒くて、グラン・リゼルヴと呼ばれている。」などと言っていた物です。今回初めて見た人もいて、最近のベルギービールファンにはなじみが少ない物。
 大瓶は昔あまり見かけない入手困難なビールだったなぁ〜。
 
8 Chimay
Grande Reserve
1996

(9% 75cl)
 コルクには1996年9月の記載。
 1996年、1995年、1994年と遡るごとに、少しずつ深みが増していく印象。
9 Chimay
Grande Reserve
1995

(9% 75cl)
 コルクには1995年10月の記載。
 1996年が△、1995年は○、1994年は◎との印象もある。
10 Chimay
Grande Reserve
1994

(9% 75cl)
 コルクには1994年12月の記載。1996年、1995年よりもバランスがよく感じられる。熟成した感じが強い。
 シメイの修道院で古いヴィンテージのビールを飲みたいと言ったとき、「在庫はない。熟成させて飲むものではない。」という話しであった。別に醸造者は、熟成をお薦めしていないし、自らもそんなことをしていないのである。
 しかし、アンワープのクルミナトールというビアカフェでは、1980年代からのシメイを揃えている。フレッシュなビールがよいとする一方、熟成させたビールがよいとするマニアの両方が存在するのがベルギービールの世界なのである。
CHIMAY GRAND RESERVE JEROBOAM
11 Chimay
Grande Reserve
2003
Jeroboam


(9% 3リットル)


三友小網
 この瓶は、最近ベルギービールのビアカフェにはよく飾ってあるので、見た人も多いはず。2002年12月に2002年ヴィンテージを味わい、「全然若い!相当待つべし!」との評価をした3リットル瓶(ジェロボーム)を出しちゃいました。そして飲み干すとは思わなかった。ブルーは熟成によって、ビールの味わいに深みが増すのだが、マグナム以上に若々しい。
 ジェロボームは2002年ヴィンテージから製造開始。デュベルの3リットル瓶が製造中止されるなど超大型瓶の製造が中止されていくなか、新たに作り始めたシメイの意欲に感謝。 
CHIMAY BLUE
12 Chimay
Blue
2002

(9% 33cl)


三友小網
 今、シメイ・ブルー小瓶(330ml)を酒販店で購入できるヴィンテージはこの2002年のもの。2001年ものもまだ、酒販店に残っている場合があるので探してみるのもよいだろう。正規代理店は(株)三友小網。
 シメイの価格は昔と比べるとかなり値下げされており、消費者にとって魅力的な価格になっている。現在の価格なら日常愛飲しても苦にならない。
 シメイ・レッド330ml 370円/シメイ・ホワイト330ml 390円/シメイ・ブルー330ml 410円/シメイ・プルミエール750ml 780円/シメイ・サンクサン750ml 880円/シメイ・グランドレザーブ750ml 980円である。
 2000年から2002年までは正規代理店もので、入手時期も新しいので状態のばらつきが少なく、正当に比較することができるヴィンテージ。今回の古いものには平行輸入品もあり、輸入の状態、購入後の保管の状態によるばらつきがあるのはしかたがないこと。そうしたことを加味して読んで欲しい。
13 Chimay
Blue
2001

(9% 33cl)


三友小網
14 Chimay
Blue
2000

(9% 33cl)


三友小網
15 Chimay
Blue
2000

(9% 33cl)


廣島
 シメイはラベルが変わって味が落ちたという説があるが、この2000年旧ラベルと上の2000年新ラベルとを比較する限り大きな違いが感じられなかった。これ以前から味が変わっていたのである。
 軽いコク。
16 Chimay
Blue
1999

(9% 33cl)


河内屋
 1999年は1998年をさらに軽くした感じを受ける。1998年からはみな同じ印象である。3〜4年も経てば熟成感が出てきそうだが。
17 Chimay
Blue
1998

(9% 33cl)

シメイカルチャークラブ/日本ビール
 1998年の小瓶は大瓶と異なり、水のように薄く感じる。シメイの最近の味わいと似ている。1997年の小瓶の味が劣化していたが、1997年と1998年の大瓶が昔のシメイの味わいを保っていたことから、シメイの味が変わったのは1998年の途中からではないだろうか。
 特に平行輸入品の裏ラベルには、原材料としてWheat Starch,Sugar,Malt Extract,Hop Extractも使用している旨の記載がある。トラピストのロゴがラベルに印刷されるようになったのも1998年からである。
 バランスはよく、キレイな感じ。
18 Chimay
Blue
1997

(9% 33cl)


河内屋
 1996年と1997年の正規代理店輸入品のラベルの年号は金色(※参考:右1997年)。
1997年のボトルは、保存に問題があったようで、いただけない。
19 Chimay
Blue
1996

(9% 33cl)


河内屋
 1996年は、最初よく冷えていてスパイシー感が強調されていた。時間とともにふくよかな香りと味が醸されてきた。しかし古酒の感じがあまりない。
20 Chimay
Blue
1995

(9% 33cl)


やまや
 小瓶で今回人気が高かったのが、1995年。1995年と1994年はあまり冷やさないで提供した。古酒の感じがするが、まろやかでバランスのとれた味わいが評価された。
21 Chimay
Blue
1994

(9% 33cl)


日本ビール
 今回大瓶の1994年とともに一番古いシメイ。10年の時が過ぎてさすがに古酒の感じがする。コクや深みがある。
CHIMAY TRIPLE(WHITE) / CHIMAY TRIPLE CINQ CENTS
22 Chimay
Tripel

(8% 33cl)
 シメイ・ホワイトは1986年に初めて醸造。Cinq Cents(仏語で500)とは、シメイ公国建国(1486年)500年を記念して醸造したビールを意味する。シメイの町には現在もシメイ城があって、公爵がお住まいになっている。
 王冠が白いのでホワイトと呼ばれるが、近年ラベルにTriple/Tripelの文字が追加た。ヒューガルデン・ホワイトに代表される「ホワイト・ビール」と誤解されないようにという配慮と、ウエストマレ・トリプルが普及し、「トリプル」のイメージが出来上がっているためだという。
 ブルーをさんざん味わったあとではトルプルのホップの苦味感が爽快である。大瓶Cinq Centsは用意したにもかかわらず、今回ボトルを開けずに終わった。

 ところで、ベルギーでは、シメイ・トリプル樽生というのを飲んだ。これは素晴らしい味わいだったので、是非輸入して欲しいビールである。
Chimay
Tripel
Cinq Cents

(8% 75cl)
CHIMAY RED / CHIMAY PREMIERE
23 Chimay Red

(7% 33cl)

三友小網
 シメイ・レッドの小瓶のラベルが変わったとき、小さく「Brune/Bruin」の文字が追加されていたのを覚えているだろうか。「ホワイト」を「トリプル」としたように、「レッド」は「レッド・ビール」と誤解を受けるから一般的な茶色のビール「Bruin/Brune」としたのであろうか?。なぜダブル「Double」でないのか?。「レッド」と呼ばれながら、「茶」とはいかに?などとと思っていたら、最近、この「Brune/Bruin」文字が削除されている。たぶん「レッド」がもともと定着していたため変えられなかったのでしょう。
 
24 Chimay Premiére


(7% 75cl)
三友小網
 アルコール7%なので、決して軽いビールではないのだが、ブルー(9%)の若いヴィンテージが軽く感じてしまうような状況なので、味わいの本領を発揮できなかった。飲み易くてよいビールです。
 今回のために正規代理店(株)三友小網のものを新しく購入したので、大瓶も小瓶も味わいの差があまりなかった。熟成を重ねて初めて、差が出て来るものです。同じビールを詰めていながら、最初から味わいに差があるのは、それはどちらかが劣化したものです。
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ベルギービールの魅力
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