酒蔵奉行所
伝説のビール会(究極のトラピスト・ビール特集)/後半
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【進行状況2】
 シメイの次は、ロシュフォール。折りよく、ロッシュの6が輸入されたので、6、8、10の3種類が揃うことになった。それぞれの生産比率は、比率の高い順に8(60%)、10(35%)、6(5%)である。
6は生産量が少なく、地域限定販売なので、ベルギーのビアカフェでも見ることは少ない。新しいビールでの私の好感度は生産比率と同じで、8が濃すぎず弱すぎずバランスがとれたビールとして印象に残る。10はアルコール度数11.3%で、強くスパイシーなのだが強烈すぎる。同じく古いラベルの10も用意したが、こちらの方が角がとれたまろやかな味わいで、美味しくこれが一番よい評価。ロシュフォール10には熟成が必要である。6はすぐ飲んで美味しく飲み易い。穏やかな感じ。
次は、アッヘルのブロンドBlond 8とブルインBruin 8。
 王冠が白い(右)方が日本に輸入されているブロンド。金属色(左)なのが、この1月にベルギーから持ち帰ったブルイン。ラベルは全く同じである。
ビールの水色は異なるが、同じイーストを使用しているので、香りが高く柔らかい感じが共通している。
さて、次は、アッヘルの最初の醸造責任者であるウエストマレのトーマス神父の昔の作品を味わうことにしよう。ウエストマレの古いラベルのビールである。賞味期限はウエストマレの場合製造から2年後となっているので、逆算すると醸造年がわかる。ダブル4種類。トリプル3種類。 
このあたりになると、皆、味わいを深く探求する余裕がなくなっている。
お待たせしました。真打!ウエストフレテレンである。膝間づいて飲むべし。
相当飲んでいるにもかかわらず、皆しゃきっとして再び真剣に試飲に向かう。 
 そう、緑/赤/青/黄の4色の王冠揃い。今回の究極とは実はシメイではなくウエストフレテンを指していたのだ。
ご存知のようにウエストフレテレンにはラベルが無い。王冠の色で判断する。今回出品のビールは、緑はブロンド(5.8%)、赤はスペシャル6(6.2%)、今は生産中止されたもの。青はエクストラ8(8%)、黄色はアブト12である。この黄色のアブト12は、もともと12%の度数があったのであろうが、私が過去に味わった限りでは11%のものが最初。その後10.8%、10.6%、10.2%と年々アルコール度数を下げているがビール名の12はそのままである。やっぱりスペシャル6が大人気。アブト12のアルコール度数違いも口に含むと、確かに段々弱くなっているのが確認できた。
最後に、「ランビック飲みたい」と言って開けた人誰?
(今回の評価対象外です。)
◆講 評◆
銘柄 印象
ROCHEFORT
25 Rochefort 6

(7.5% 33cl)
 6に限っては生産量が少ないので、いまだにこの旧ラベルを最新のビールにも使用している。新ラベルはまだベルギー現地でも出現していない。
 軽いコクでスムーズ。飲み易い。
26 Rochefort 8
(9.2% 33cl)
 一番新しいラベルは、修道院の住所がラベル上方に書かれている(8と10のみ)。
 バランスがとれた味わい。スパイシーさがある。
27 Rochefort 10
(11.3% 33cl)
 アルコール感およびスパイシー感。コク深く刺激的。
28 Rochefort 10
(11.3% 33cl)
 旧ラベルの10。なおかつ、昔の瓶使用(右)。
 熟成によるまろやかさがあり、新しいボトルにあった刺激性がとれ、飲み易くなっている。
 ロッシュの中ではこのボトルが一番。
ACHEL
29 Achel
Blond 8

(8% 33cl)


小西酒造
 トラピスト・アッヘルが醸造されたのは1998年12月。ウエストマレのトーマス神父(シメイにも亡くなったが同じ名の神父がいた)を招き醸造を開始した。、酵母は、ウエストマレ酵母を使用しているせいか、香りにウエストマレ・トリプルを感じるが、別に古い瓶でもないのにアッヘルの方が飲んでやわらかい。これは醸造水の違いによるのではなかろうか。アッヘルの方がより柔らかい(軟水)水なのだと思う。
 アッヘル・ブロンドが日本に輸入された最初のロット(2002.2)を最近飲んだが、1年と少しの期間で澱がすごく出ていて、白く固まって沈殿していた。それでもまだ濁っている驚異のビール。ろ過の具合が他のトラピストビールより弱いのであろうか。今回のブロンドは新規購入で新しいものなので、それほどの澱はみられないが他と比較すると多い方。発泡感がよく、泡立ちがよい。
30 Achel
Bruin 8

(8% 33cl)


ベルギーから持参
 アッヘル・ブルインは、やさしい感じで、香りはブロンドと共通。全体に何に似ているかというと、ロシュフォールの6なのである。それというのもアッヘルのビールは、トーマス神父が病気で引退後、ロシュフォールからアントワーヌ神父が招かれて、醸造しているのである。ロシュフォールのビールはすべてブラウン色のビール。アッヘルにブラウンが登場しても不思議ではない。それにロシュフォール6といっても、実際にはアルコール度数が7.5%もあり、アッヘル8Bruinの8%に近いのである。
WESTMALLE
31 Westmalle
Double

(2002)
(7% 33cl)

※2004期限
 本来、トラピストビールの代表格は、ウエストマレだと思っている。それは、ブラウンのダブルDouble/DoubbelとゴールドのトリプルTriple/Tripelという表示は、アベイビールに真似され、一般化した表示となっているからである。
 生産量の一番多いシメイですらこの表示を真似するようになり、シメイ・ホワイトは現在シメイ・トリプルが正式名称である。
 
 そういう定番的な味わいを見せるウエストマレ・ダブルは本当に美味しいビールである。しかし、なんとなくパッとしないのは、ラベルが毎年のようにデザインが変わるのである。それもそんなにいいとは思えないデザインに。ラベルがこんなに変わっては味わいも変わっているのでは?と思ってしまうが、ありがたいことにそんなことはないようである。
 古い順に味わったが、見事なバランスを持っている。どうせラベルを変えるなら、シメイ・ブルーみたいにヴィンテージを入れて欲しいものである。

 ウエストマレ・ダブルの瓶もいいが、ベルギーに行かれた折には、どうしても味わって欲しいビールがある。ウエストマレ・ダブル樽生である。
 今回のように熟成させたウエストマレ・ダブルもよいが、新鮮なウエストマレ・ダブルも忘れがたいビールであることを付け加えておく。

※☆による評価は、ありません。
32 Westmalle
Double

(2001)
(7% 33cl)

※2003期限
33 Westmalle
Double

(1999)
(7% 33cl)

※2001期限
34 Westmalle
Double

(1996)
(6.5% 33cl)

※1998期限
35 Westmalle
Triple

(2000)
(9% 33cl)

※2002期限
 ダブル同様、トリプルも節操無くラベルが変わる。
 ウエストマレ酵母を使うアッヘルとの違いは、香りがストレートに刺激的に鼻の奥に届く。アッヘルの商品名がブロンドと言っているのに対し、ウエストマレがトリプルと言っている違いがそのまま香りにある。しかし、そうしたストレートさも熟成を重ねたビールでは柔らかく変化している。
 鋭いものと柔らかいもの。評価はお好みで。

※トリプルには今回出品を見送ったが、大瓶が製造され輸入されている。
※一部、☆による評価は、ありません。
36 Westmalle
Triple

(1999)
(9% 33cl)

※2001期限
37 Westmalle
Triple

(1995)
(9% 33cl)

※1997期限
WESTVLTEREN
38 Westvlteren Blond
(5.8% 33cl)

河内屋
 昔あった修道院内部用のダブルDouble4とスペシャル6の醸造をやめ、このブロンドになった。ダブル4もスペシャル6もブラウンなビールだったのに、統合してブロンドのビールになるとは!?。単にウエストフレテンもゴールド色の商品をラインナップに加えたかっただけではと勘ぐってしまう。それでも香味はしっかりとウエストフレテレンなので味わいには好感。
39 Westvleteren
Special 6

(1996)

(6.2% 33cl)
ベルギーから持参
 製造中止前のスペシャル6。茶色の水色。ロシュフォールの6よりも軽いが、ウエストフレテンの特徴である吟醸香に近いバナナの香りがしっかりする。古酒になる一歩手前での熟成した深みのある美味しい状態で大勢の方々に味わっていただけたことは、このボトルにとって幸せであろう。
40 Westvleteren
Extra 8


(8% 33cl)

河内屋
 ロシュフォールの8同様、アルコール度数と味わいのバランスから人気のあるエクストラ8。
 この独特の香りは、実は唯一無二ではなく、昔ライセンスでセント・シクタスを作っていたセント・ベルナルドス醸造所のビールにも同じ香りが感じられる。この香りを嗅ぐと幸せになってしまう。
41 Westvleteren Abt 12

(11.0% 33cl)

ベルギーから持参
 最強のウエストフレテレンの中で今回最も古いもの。アルコール度数が11.0%。しかし熟成を重ね、穏やかでまろやかな深みのあるビールに変身。
42 Westvleteren Abt 12
(2000)

(10.8% 33cl)

河内屋
 次は10.8%の登場。少し新しい分、スパイシー感が出ている。バナナの香りとコクが見事に調和。強烈に主張するビールではないく、やさしく受け入れたいビール。
43 Westvleteren Abt 12
(2001)

(10.6% 33cl)

河内屋
 さらに度数が下がって10.6%。ベルギービール全体にアルコール度数が下がっている傾向がある。たまたま造ってこうなったとは思えない。
44 Westvleteren Abt 12
(2002)

(10.2% 33cl)

河内屋
今では10.2%。11%から10.2%への変化は垂直テイスティングによってはっきりわかる違いがある。
 来年は10%にして、表示も12から10に変えようとしているのではないか。マレッツみたいに6、8、10というのも判り易いかもしれないですね。
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