第2回ベルギー王国ビール探訪記(4)

ビール醸造所探訪(1)

 ベルギーのビール醸造所はどこも醸造規模が小さい。そして、瓶詰めしたビールの販売が主体のメーカーが多く、レストラン併設の ブルーパブは珍しい。今回の旅行では、日本の地ビールレストランを連想させる数少ない地ビール醸造所を訪ねてきた。

ブラスリー・ミブラナ Brasserie Mibrana(レ・ザルティザン・ブラッスール Les Artisans Brasseurs)
ル・ミロワール Le Miroir

ブラスリー・ミブラナ Brasserie Mibrana  

Les Artisans Brasseursレ・ザルティザン・ブラッスール

ブリュッセルから電車で約1時間、ワロニア地区のナミュール駅に着く。ナミュールはフランス語(ワロン語)圏の都市である。 街はフランドルの都市とは異なり、何となくおしゃれな感じである。通りを歩いていると、デュ・ボック醸造所 BRASSERIE DU BOCQ のゴロワーズLA GAULOISEの看板をかかげたカフェが目につき、ナミュールで勢力があるビールであることが解る。 多数の銘柄のビールを醸造しているデュ・ボック醸造所は、ナミュールに近いPURNODEの町にあり、醸造所見学も出来るらしい。 アベイ・ビールでお馴染みのマレッツ修道院やフローレフ修道院もこの都市の近くにあるが、どちらの修道院も修道院の建物 ではビール醸造をしておらず、それぞれモルトガットMOORTGAT醸造所、ルフェーブルLEFEBVRE>醸造所が契約に基づき修道院ビールの醸造を行っている。修道院の見学は可能とのことである。

Brasserie Mibranaブラスリー・ミブラナはワロニア地区のナミュール駅前に1995年に出来たばかりの地ビール醸造所である。 カフェとしての名称はレ・ザルティザン・ブラッスールLES ARTISANS BRASSEURSという。

 駅前の喫茶店風の店なのだが、通りに面して小さな銅製の仕込み釜を設置し、通行人に地ビールを醸造していること をアピールしている。我々は店に入り、レンガで囲われている仕込み釜2台と壁に設けられている各種のスイッチを確認した上で、奥のテーブル席に座った。店内は光が入って明るい雰囲気である。まだ正午前だったので我々の他にはお客さんがおらず、店の人ものんびりして注文を取りに来る様子もなかった。しかし、正午を過ぎるとランチを食べに来た客や親子連れ などがどんどんやって来て急に混雑してきた。大学生の研究会なのか、ビデオカメラで店内を撮影しているグループもいて、 我々が醸造釜を見ている風景を撮りたいので撮らせて欲しいと頼まれたので引き受けたら、もう少し前だの後だの、何か会話 をしてだのと注文をつけられ、しばらく釜の前で撮影されることになった。

  さて、メニューには自家醸造のビールと手ごろな価格の料理が載っている。ビールは、Marlagne銘柄2種類とAldegonde 銘柄3種類の計5種類がレギュラービールで、それに季節のビール(この日はクリスマスビールのNoel )を加えて常時6種類が味わえる。さらに特製のLA JAMBOISE de Bister というマスタード入りのビール(これは瓶)もあった。メニューにはこれらのビールを味わうためのお試しセット なども載っている。我々は順番に味わうことにした。初めに注文したMarlagne銘柄のビールは細長いグラスで、 次に注文したAldegonde 銘柄はたっぷりと太った丸みを帯びたグラスで出てきたが、これはアルコール度数に違いがあるため、それに合った 形状のグラスとなっている。逆にグラスの形状を変える必要があるからこそ2つの銘柄名になっているとも思われる。

 お腹も満たすべく、CHIONS AU GRATIN   L'ANCIENNE,PUR E(昔風チコリのグラタン、315BF)、BOUDIN BLANC ET NOIR, COMPOTE,PURE(白と黒ソーセージとリンゴの砂糖煮、295BF)を注文するが、フライド・ポテトも大量に添えられていて食べきれないほどである。

 店内の醸造設備に注目すると、客席の一番奥に瓶詰め場があって、ガラスで仕切られた向こう側に瓶詰め機がある。瓶詰めされたビールはここを訪れる前にも他の店で見かけることがあった。瓶詰め場ではビールケース が12〜13段に何列も重ねられ、さらに地下に通じるら旋階段にもケースが山積みされている。貯蔵用の倉庫は設けておらず、店内各所置けるところに置いているようだ。青いビールケースには、DU BOCQ醸造所の St'Benoit,Gauloise といった銘柄のロゴがプリントされているが、この醸造所の瓶の形状もケースにプリントされている銘柄と同じ形状の瓶を使用している。ベルギービールはビール瓶のサイズや形状もさまざまな種類があるが、それらに応じたビールケースが必ずあり、瓶はリサイクルされている。ビールを1000種類揃えるブリュッセルのカフェ、 シェ・ムーデル・ ランビックでは、通路に数種類のビールケースが重ねられており、店の人は空瓶がでるたびサイズ・形状にあった ケースを探して片付けていたのが印象に残っている。

 その他の醸造設備は地下にあり、見せて欲しい旨を伝えると、「昼時で忙しいので、午後3時になったらまた来なさい」とのことで、ナミュール市内を散策の後、再び店を訪れた。案内してくれたのはやや太った店のお女将さんである。地下にはろ過機や貯蔵タンクがあり、天井や壁にはそれらと地上にある仕込み釜とをつなげるパ イプ類等が縦横に走っている。貯蔵タンクにはビール名がマジックで書かれていてどのタンクがどのビールかす ぐわかるようになっていた。ビールは貯蔵タンクからいったんケグ(樽)に移される。ケグは1階のカウンタ ーの真下にあたる所に並べられて、柔軟性のある細いパイプで1階のビアサーバーとつながっている。ガス圧で 地上に送るので、ガス・ボンベも並んでいる。

 年間の醸造量は 400hl(=40kl)で、日本のビール醸造免許を受けるために必要な年間最低醸造量60kl と比べて醸造規模の小ささが想像できると思う。

 この醸造所では、結婚式や誕生日の記念など個人のオリジナル・ラベルのビールも作っている。 カフェの壁には今まで製作された多くのラベルが見本として貼られていて、さまざまなデザインを見 ていると楽しい。店ではお土産としてビールグラスとビールのセットの他、チーズやサラミソーセージ、 ジャムなどをセットしたものも売っている。

【データ】 BRASSERIE MIBRANA
LES ARTSANS BRASSEURS(2 Place de la Station,NAMUR) 081 23 16.94

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