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ベルギーの地ビールばかりがベルギーの食文化ではない。他にもベルギーならではのさまざまな食文化があった。それらを紹介しよう。
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冬寒い中欧・北欧ならではの飲み物にグリューヴァインがある。ベルギーの中でも、より
北方に位置するアントワープでは、寒い街頭でこのグリューヴァインをグラスで売っている露店を何軒か見
かけた。市庁舎前のグローテ・マルクト広場では、ちょうどクリスマス前の日曜日だったこともあって、
縁日のようにテントがいっぱい張られ、チョコやお菓子、チーズ、インテリアの小物、ボビンレースなど
様々なものが売られていた中、グリューヴァインの店もあった。サンタクロースに扮した売子がいる店など
あっていい雰囲気である。羊やロバなどの見せ物、キリスト生誕の劇の上演、仮設ステージでの賛美歌を歌う
聖歌隊などもクリスマスらしい。
さて、グリューヴァインはホット・ワインのこと。大きな鍋に赤ワインをいっぱいに入れ、丁子やア
ニスなどのハーブを加えたり、柑橘系の果物を浮かべたりと、店によって少しずつ風味は異なるようだ。
ドイツ語で「GLUHWEIN」、オランダ語では「Warme
Wijn」と看板には書かれている。我々 はあまり味付けをしていない店のワインを飲んだのだが、甘口の赤ワインを使っているの
か砂糖を加えているのかは不明であったけれども、ほのかな甘味と酸味が調和して旨か
った。実は、ワインを温めて飲むなどもってのほかと思っていて、飲むのに躊躇したが、同行の与力(仲條)
の強い勧めで飲んでみたら、身体が内 側から暖まってなかなかよいものだ。冬の屋外では、洋の東西を問わず燗酒に限る。
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他には、ベルギーが原産のスピリッツ、ジェネヴァー(JENEVER)
というジンもショットグラ スで一緒に売っていて、グリューヴァインと同じように人気があった。ジェネヴァーはアルコール
が強いので若い人や男性向き。
グリューヴァインは1杯60BF(約240円)、ジェネバーは1杯50BF(約200円)だが、グ
ラスの保証金も加えて支払い、返却すると保証金は返してくれる。店の回りには、シェ
リー樽がテーブル代わりに置かれていて、これらの酒を飲む人たちが取り囲み、賑やかである。
カフェでもこのワインを置いている店があるようで、「Warme
Wijn 70Fr」 との貼紙が窓ガラスに貼られて
いた。ボトルを売っている店もある。1本 240BF(約900円)、ラベルには「GLUHWEINX'erstmarkt1995
Antwerpen」とあり、地元で造られている特別なワインのようだ。
なお、ビールにもホットビールがあって、LIEFMANS社の
GLUHKRIEKというチェリー味のビールを後日見たので、いずれ味わってみたい。
ベルギー名物は?といってすぐに思い浮かぶものは、チョコレートであろう。チョコといえば、日本にも輸入されているゴディヴァGODIVAとノイハウスNEUHAUS が有名である。
ゴディヴァのグランプラス店は、広場に面する中世建築の中にあり、黒を基調とした店舗はチョコメーカーの
重鎮としての雰囲気を持っている。ノイハウスはクリーム色が基調の明るい店舗造りで、特にギャラリー・サン・
チュベール店は前世紀の雰囲気があってよい。
本当にベルギーの人たちは、チョコレートが好きらしく、どの街に行ってもチョコ屋さんがあり、どの店も繁盛 している。我々もつられて店に入ってしまい、随分チョコを購入してしまった。ブリュッセルのグラン・サブロン広場 にあるウィッタメールWITTAMER は、ゴディヴァやノイハウスより高級な店。グラン・プラスにあるギャレーGALLER やギャラリー・サン・チュベールにあるコルネ COTNE のチョコも上品。以上は、高級なハンドメイドチョコ。レオニダスLEONIDAS はチェーン店で、 いたるところにある廉価なチョコ屋で、いつも街のおばさんで賑わっている。
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ブルージュでは、巻貝のチョコが有名。ヘルフーケVERHEECKEやSUKERBUYCという店 へ行った。修道院でもチョコを作っていてベギン会(女子)修道院のチョコはお薦めである。
クリスマスの時期だったので、ショーウィンドウには、サンタクロースやトナカイ、長靴などクリスマスにちなむ物の形をしたチョコが並べられていて、中には50p以上の大きさの物もある。これらチョコ細工にも値札がついている。
クッキー屋さんでも巨大な聖 人や農民形のクッキーがショーウィンドウに飾られていて楽しいが、人形のようなチョコやクッキーを割らずに持ちかえ
ることは非常に難しいし、食べることも勿体ない気がする。クリスマス用の美しく包装したパッケージが手ごろで買いやすい。
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また、日曜市やクリスマス市の露店の中には、自家製手作りチョコ屋さんも多数あって、個人経営の店主が、自己流にさまざ
まなアイデアを懲らしたデザインのチョコを並べている。グラム単位で買え、チョコは紙袋に入れて渡される。
最後に、ゴディヴァとノイハウスのチョコをお土産に持ち帰るなら、ブリュッセルの空港の免税店で購入するとよい。
市内より付加価値税分、安く購入できる。品揃えも両店ともしっかりしているから安心である。
北海に面する北部ベルギーでは、魚介類が豊富である。特にムール貝の料理は、ベルギーの名物で、様々な調理方法 で供される。我々もこの名物料理を味わった。
★ムール貝の料理 | ![]() |
Moules au Vin blanc は、ムール貝の白ワイン蒸し。絶対に食べよう と意気込んでレストランへ行ったが、アントワープではオランダ語のメニュー。‘Moules'のス ペルがなくて困惑したが、‘Mosselen in witte wijn'がこれ。セロリやパセリのような香菜の みじん切りとムール貝を白ワインで一緒に蒸したものだが、その量たるやバケツと評される鍋一杯に出てくる。 50個以上あったであろうか、食べても食べてもなくならないのが嬉しいが、途中でつらくなる。 ムール貝の料理ではこれが定番という感じで、店を見回すと1人で食べている人の姿が必ず見つかる。 500〜600BF(約2,000〜2,400円)で食べることができる。 | |
Moules al'Escargotは、みじん切りのパンやおろしニンニク、 バターとチーズをムール貝に乗せてオーブンで焼いたもの。 12〜18個のムール貝形の窪みが付いたステンレス製の専用皿でエスカルゴ風に出てくる。 ニンニク風味が香ばしく旨いのだが、バターの油がこってりしてやや飽きる。300BF(約1,200円)前後。 | ![]() |
Moules Parqu es は、生ムール貝。日本では冬の生ガキは定 番だから、同様にベルギーでは生ムール貝があるかも?と思っていたら、案の定メニューにあった。レモンを絞って 食べるのは生ガキと同じだが、店によってはクリームソースが付いてくる。こちらも旨い。生ガキに比べると、少々 クセがあって味が濃い独特な風味だが、ベルギーならではの貴重な味。 | ![]() |
★生がき | ![]() |
ムール貝と並ぶこの季節の名物は、生がき。 フランスでは生がきは名物。合わせるワインはブルゴーニュの白でシャブリと決まっている。だが、 このカキ、日本のカキと品種が違う。レストランでOyster Parquces を注文すると 、直径7〜8pの帆立貝のような形のカキが6個、皿に並べられて出てきたのでびっくり。日本のマガキ、 イワガキと異なる品種で、ヨーロッパヒラガキという。マガキもあるがヒラガキの方が高価で美味。 |
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ムール貝で有名な店はいくつもあるが、アントワープではレストラン「ROODEN
HOED(赤い帽子)」に入ってみた。古くからある典型的なフランドル地方の内装で有名な店。ここのお薦めは、フランス・アルザス
地方のシルヴァーナ SYLVANERという葡萄品種を使ったワインで、この店特注のキューベ(樽)のものである。
ムール貝に合わせるお薦めの酒は、この店に限らずアルザスワインであることが多かった。確かに味のあるムール
貝にはアルザスがよく合い、ブリュッセル中心部にある有名な海鮮レストラン街、イロ・サクレ地区にあるレストラン
「Restaurand Vincent」でも、アルザスのピノ・グリPinot
Gris(855BF)種のワインがお薦めで、これも旨かった。
ベルギーはフランスの北隣りの国だが、高緯度のため葡萄の栽培が行なわれておらず、ワインは
生産されていない。しかし、料理は正統なフランス料理を受け継ぎ、本家フランスよりもフランス的である
とまで言われている。フランス料理に合わせる酒なら、ベルギービールよりも、ワインだと思う我々。
スーパーマーケットの酒売場を覗いてみたが、ワインがビールと同程度またはそれ以上の売場面積を占めており、
その品揃えはフランスを始めとしてスペイン、チリ、イタリアなど各国多種にわたる。特にフランスワインでは、
アルザス地方、ラングドック・ルーション地方、南西地方(カオール、マディラン、イレルギー等)など低価格
で高品質なワインの充実が羨ましい限りだ。
さて、ベルギーの海鮮料理にはいつもアルザスワインというのもつまらない。ブルッセルの聖カトリーヌ教会近
くには魚市場があり、地元の人達で賑わう海鮮レストラン街があるが、そこのあまり値の張らない気さくなレストラン
「JACQUES」で、ウナギのグリーンソースがけ“Anguille
au vert"、アンコウのワーテルズイ“Waterzooi
van Baudroie" 、生ムール貝などを注文した時、たまには違うワインをと思って
10数種ある銘柄からサンセールを注文してみる。まわりを見ると、我々と同じメニューを注文し、ワインもサンセール
というグループがいる。新しくやってきた客もなぜかサンセールを注文している。地元の人たちにサンセールの白は人
気があるようだ。実際、さわやかな飲み口で、ややコクのある味わいが、やや濃い目の味付けの料理によく合った。
ベルギーで料理と一緒に出てくるのが、フリッツ(Frites)というフライドポテト。このフライドポテトは、18 世紀にベルギーで生まれたもの。冬、川が氷ると釣りができないため、魚に代わる料理として作られたという。 それがフランスを経てアメリカに伝わった。フランスから来たので、フレンチ・フライの名が付いたという。付け合わせにして は大量に出てくるフライドポテトを、マヨネーズやその他のソースに付けて食べるが、我々はムール貝だけでもお腹いっぱいな のに、ベルギーの人たちは本当によく食べる。
ブリュッセルの街を歩いていると、ワッフル屋さんが多いことに驚く。2種類あって、リエージュワッフルは厚めの丸いワッフルで、ブリュッセルワッフルは薄めの長方形のワッフルである。そのままのプレーンの他、チョコやアーモンドなどトッピングできる。ブリュッセルの街中では、リエージュワッフルの方が人気のようだ。
ブリュッセルの中心、グラン・プラスのすぐ南側には、ギリシャ文字独特のレタリングの看板が目立つ通りがある。ここには本格的ギリシャ料理の店やファースト・フードの店が立ち並ぶ。ファースト・フードの店のメインの商品はピタ・パン
PITTAである。羊肉を棒に分厚く刺して、回転させて焼いた物を包丁で削り取るようにしたものを、細切れにする。この削り取る技が自慢のようで、客に大いに見せびらかしていた。これを野菜などと一緒に薄くて丸いイスラム風のパンの中央を裂いて、もうこれ以上詰め込めないと思えるほど具を詰め込むのである。各種あるが大体120BFくらい。
ベルギーは、チーズの本場フランスとオランダの間にある国。だから美味しいチーズがあるが、どちらかの国に似
たタイプのチーズを生産している。主流はオランダのゴーダタイプのチーズで、パッセンダールやオールド・ブルー
ジュは日本にも輸入されている。フ ランスのポール・サリュPORT-SALUTというチーズ(ポール・サリュ修道院が元祖)にも似た
シメイ修道院のチーズ(2種類あった)も売っていて、表皮を少し洗ったような湿り気があり、ワックスが塗ってあ
る僧院チーズであった。オルヴァル修道院でもチーズを作っている。ビールを造っていない修道院でもチーズは作っ
ていて、例えば、ヴァル・デュー修道院は、ABBAYE
DU VAL-DIEUというアベイビールをピロン醸造所に造らせているが、
同名のブランドで、「BOUQUET DESMOINES」という表皮が白カビで覆われた酸味のあるシェーヴルチーズを販売して
おり、我々は、これを夜の酒のつまみとした。
市の日になると、チーズ屋さんも何店か出店し、様々なチーズをテントの中に並べている。直径50p以上もあるゴ
ーダタイプのチーズを切り売りしている様は、見ていて迫力がある。
秋から冬にかけて、ジビエがシーズン。肉屋の前を通ると、キジや鴨、野うさぎが5〜6匹づつ、そのままの姿で釣り
下げられているのをよく目にした。アントワープでは、広場での日曜市に野鳥のお店もかなり並んでいて、大きなカゴに
数羽づつ入れられている。日本の公園や神社などによくいるネズミ色した土鳩までもカゴに入れられ売られている。道理
でアントワープの広場には鳩がいないわけだ。買手が気に入った鳥がいると、カゴの中で暴れる中、店の人に捕まえられ
て、段ボール箱に押し込められ、箱を紐で縛って買手に渡される。よく売れているようだ。
さて、この季節に訪れたのだから、ジビエを是非を味わいたいと思い、ブリュッセルのイロ・サクレ地区にある
「Restaurand Vincent」で、SUPREME DE FAISAN
BARABAN ONNE OU FINE CHAMPAGNE (800BF)というキジの料理を食べたが、散弾銃の玉が歯にガキッ。玉が2〜3個入っていた。
ブリュッセルのグラン・プラス北側にあるレストラン街がイロ・サクレ地区である。ここは、観光客がよく行く場所。店の前には、貝、海老、蟹などの魚介類と花やレモンが美しくコーディネートされていて、客を呼び込んでいる。ここで目立つのが、カキ剥き職人。ワインにソムリエがいるようにカキを剥く専門の職人がいて、観光客のグループを前にしてその技を披露している。ほんの1〜2秒で貝が開き、あっという間に5〜10個のカキを剥く。ムール貝ではなくカキを剥いている。
ジビエの店では、野鳥やキツネ、イノシシなどの野性動物の剥製が並べられている。
カフェでは、ビールばかりでなく軽食もメニューに載っている。ベルギーでは、コロッケが名物と聞いていたので、 ブリュセルのモール・シュビトでメニューを見たとき、是非食べてみようということになった。メニューにCroque の文字を見てコロッケと思ったのだ。注文したものは、 Croque Breughel。しかし、実際にでてきたのは、ネギとチーズとハムなどをはさんで軽く焼いたサンドウィ ッチであった。2日後、ブリュッセルのベカッセでも今度こそコロッケを食べようと Croque-Monsieurというものを注文したが、やはり焼いたサンドウィッチが出てきた。コロッケは、 クロケットCroquette(蘭Koroket)という。結局コロッケを注文出来ずに終わったが、ルーヴェンのビ ストロで、野ウサギやサーモンの料理を注文した時、付け合わせがフリッツでなく、コロッケであった。
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