 |
 |
前 |
次 |
第1回ベルギー王国ビール探訪記(11)
ビアカフェ探訪
アントワープのビア・カフェ
アントワープは、画家ルーベンスが活躍した街、名作『フランダースの犬』の故郷、
そして現在はダイヤモンド産業の中心地として知られているベルギー第2の都市である。見所は、
街のシンボルとなっているノートルダム大聖堂で、高さ
123mのゴシック建築。ここには、 『フランダースの犬』の物語の中で、主人公ネロ少年が死の直前最後に見たルーベンスの大作
『キリストの降架』の他、傑作がいくつもある。
また、近くの聖ヤコブ教会には、彼の作品の他に墓碑がある。ルーベンスの家にはいまだに家財が残されている。
壮大なアントワープ中央駅(国の重要文化財)も必見。
この街オリジナルの地ビールといえば、デ・コーニンクDE KONINCKが有名。駅前通りに面したお洒落な店、カフェ・デザールCAFE DES ARTSで味わった。 この店のメニューには、ビールが8種類。
店で飲んだのは、キュベ・デ・コーニンク CUVEE DE KONINCK(105BF)という度数が高く非常にコクがある特別製のビール。もう一方の定番DE KONINCKは、典型的なベルギーエール。こちらは街のスーパーで購入しホテルで味わったが、度数も高くなく味わいも薄い。
店ではもう1本、JOHN MARTIN'S PALE ALE(105BF) を注文。これは英国風エールで、かって英国COURAGE社
がベルギー輸出用に造っていた同名のビールを輸入業者JOHN
MARTIN社(アントワ−プが本拠)がベルギー国内で委託生産しているビール。
この会社はまた、英国のSCOTTISH & NEWCASTLE社(>マックエワンMacEWAN'Sが代表銘柄)にベルギ−輸出専用のGORDON銘柄のビールを造らせている。GORDON FINEST GOLD BLONDをスーパーで購入し味わったが、帰国後味わったGORDON HIGHLAND SCOTCH ALEはさらに名品。本場スコットランドで味わえないスコッチエールとして、面白い存在である。
さて、この街にはクルミナトゥール Kulminator というベルギーを代表するビア・カフェの他、それぞれに特徴あるカフェが多数あって興味を引いた。さらに今回訪れたカフェ以外にも多数の素晴らしいカフェがあるというので、再びこの街を訪れたいものである。
 |
 |
クルミナトゥールは、ベルギーでも屈指のビア・カフェである。メニューには
400種類を越えるビールが掲載されているが、特に注目すべきは、ヴィンテージビールの品揃えで、1980年代のビールなどは注目に値する。店の奥では保管庫をガラス越しに見ることができて、その種類の多さに圧倒
される。メニューはベルギービールのカタログ、保管庫は博物館といった感じである。
この店を訪れたのは、ベルギーに着いた初日。ブリュッセル空港に到着後すぐ、我々はバスでアントワープへ向かった。
夜6時過ぎに到着。すでに暗くなっていたが、アントワープの街はクリスマスの飾りのイルミネーションや
巨大なアントワープ駅舎のライトアップ等で明るい雰囲気に包まれていた。駅近くのホテルにチェックインし
た後、我々はこのカフェを目指した。事前にガイドブックの地図で店がある通り名を確認していたが、なかなか辿り着かない。冬のアントワープの夜は、霧が深くて寒さが身にしみるようだ。街の中心からやや外れたその辺りの商店はもう店を閉めて、人通りもまばら。そんな中、ライトに照らされた看板が遠くに浮かぶように見えた所がクルミナトゥールだった。
地ビール「DE KONINCK」の看板の下に「Kulminator」の看板がぶ
ら下っている。窓越しに店内を覗くと、カウンターに座る数人の常連らしい客と暖炉の暖かい炎が見える。扉を開け中に入ると、
カウンターとテーブルが5つほどの小さな店。カウンターの奥の棚には見たことがないビールの瓶がずらりと並んでおり、銘柄ごとに形の異なるビールグラスがカウンターの上の棚に並んでいる。何ページもあるオランダ語のメニューに戸惑い、豊富な銘柄に
選択しかねていると、常連らしきおじさんが近付いてきて、この季節ならクリスマスビールがお薦めだと教えてくれた。言われる
まま、アベイビールのクリスマスヴァージョンである
CUVEE DE NOÉL ST.FEUILLIEN(750ml:275BF)をまず味わう。 アルコール度数の高いビールだ。2本目は
POSTEL CHRISTMAS KERSTBIER(750ml:240BF)で、これもクリスマスビール。
店にはこのおじさんのグループの他は、あとからやってきた若者1人だけ。この若者はDUVEL を1本だけ注文し、あとはゆっくりと味わい、
飲み切ると店を出ていった。1本のビールを時間をかけて味わうのがベルギースタイルの飲み方と言われている。
我々は、ビールを味わいながらテーブルにあったオランダ語のビール新聞やメニューを注意深く見ていたが、
メニューに是非とも味わってみたいビールを見つけた。それは、幻のトラピストビールであるウェストフレテレンWESTVLETEREN。それもヴィンテージビールである。
1982年の「DUBBEL GROENE STOP 」(170BF)と1987年の「ABT GEELE STOP」(195BF)。特に前者は、現在市販してないアルコール度数4度のもの。
まろやかな味わいは、日本酒の古酒や中国の老酒の熟成した味わいに似ている。
おじさんのお薦めはもう1本あって、それは1986年に発売されたシメイ・
トラピストビールのシメイ 500年記念ボトルで、現在は同じレシピでシメイ・ホワイトとして販売されているものである。残念ながら夜もふけ酔いも回ってきたので、これ以上注文できなかったが、次回ここを訪れるときまでメニューからなくならないように祈り、店を後にした。
この店は、ベルギービールの奥深さ体験させてくれる素晴らしい店であった。ベルギーへ行く機会があるなら、無理をしてでも行く価値がある。
なお、マイケル・ジャクソン著『地ビールの世界』の巻頭カラーページで、著者がビールグラスを持っている写真は、
このクルミナトゥールで写した写真であるようだ。
【データ】 |
KULMINATOR (32 Vleminckveld,ANTWERP) 評価:CAFE ★★★★
BEER★★★★ |
|
03 232 45.38 休 20:30〜 〜12:00〜17:00〜 |
アントワープのシンボルであるノートルダム大聖堂のすぐ裏に、ヘット・エルフデ・ゲボットがある。 店内に入るとここは教会?と見間違えるような聖像の数々。祭壇もある。白壁にレンガと木、そしてアンティークな美術品としても価値がありそうなおびただしい数のキリストやマリア、天使、その他の聖人像が不思議な雰囲気を醸し出している。
ビールは25種類を揃えるが、ベルギーのカフェとしては普通。この店で我々は4種類のビールを味わった。店の名前を冠したスペシャルビール HET ELFDE GEBOD(樽生、グラスで80BF)は、この店のオリジナ
ルビールだが、醸造所は不明。オランダにも同名のビールがあるようだが、関係も不明。VAN DEN STOCK GUEUZE(樽生、グラス70BF)は、日本にも輸入されている
「ベルヴュー」を生産しているインターブルー社傘下のヴァン・デン・ストック醸造所のランビック・グーズ。
パルムPALM(樽生60BF)は、英国風のエールで、DOBBEL PALMというクリスマスヴァージョンもある。OLD BLOWNと書いてあったビールは、アルケン・マース醸造所の
ZULTE(小瓶70BF)で、ブラウンビールであった。 樽生のビールは、正面に祭壇のように仕つらえてあるカウンターのビア・サーバーから注がれる。祭壇の裏側が厨房になっている。
この店は、カフェにしては料理が充実しており、地元フランダースの料理を出してくれる。
お薦め料理メニューは、当然ベルギー名物「ムール貝のワイン蒸し(595BF)」。
バケツのような大鍋いっぱいに出てくる。 料理があるので、カフェではなくビストロとも言える。
ベルギー料理とビールの両方を楽しめる店だが、所狭しと並べられた聖像群(2階から眺めるとさらに圧巻である)
の宗教的雰囲気を体験するだけでも訪れる価値がある凝った店である。
【データ】 |
HET ELFDE GEBOD (10 Torfburg,ANTWERP) 評価:CAFE★★★★★
BEER★★ |
|
03 232 36.11 無休 毎日10:00〜 |
ペルグロムは、地下の防空壕を利用した店である。表から見ると、狭い通りに面する細長い3階建ての三角屋根の建物であるが、屋根からビール樽がぶら下げられていて、ちょっと面白い。これは中世、建物の敷地面積で課税していたため、市民は、なるべく面積を減らすべく上に伸びた細長い建物を建てた。階段が狭いので、上の階にビ−ル樽を運べなかっため、屋根に滑車を付け、ビール樽を表から引き上げたという。どの建物も細長いわけだ。
入口を入ると狭いホールになっていて、暖炉には暖かい炎。その奥に地下への階段があって防空壕へ。天井までの高さが高いところで
2.5m位,壁から天井までアーチ式に赤レンガ。壕は、いくつかつながっており、地下の割りには意外と席数が多く、日曜の午後とあって客はほとんど満員。
ビールの種類は予想より少なく20種類。その中で選んだのは、この店のオリジナルビール、PELGROM
GRAND CRU。750mlの陶器製のボトルに入って
310BF。アントワープ州のスターケンズ醸造所のもので、日本にも輸入されている同醸造所のセント・セバスチャン・グランド
・クリュと同じ形のボトルであるが、アルコール度数や味わいは異なっていた。非常に混雑していて騒がしい上に、店員が少なく追加の注文も出来難かったので、この1瓶だけ飲んで店をあとにした。
★
賑やかな雰囲気を楽しむのならば、このペログラムの他、デ
・コーニンクが飲めるカフェ ・デン・エンゲルCAFE DEN ENGELはお薦めだが、カフェ・デン・エンゲルに入ろうと店内を覗くと、
酔っ払い達が皆立ち飲みで、グラスを片手に語り合っている。細長くて狭い店内は大きな鏡張りで広く見えた。学生たちが安く飲める店ということもあって、ビールをゆっくり味わえる雰囲気とは異なるので、今回、中に入るのは遠慮した。
また、ヒューガルデンの直営店<カフェ・ヒューガルデン>がアントワープにもあった。
【データ】 |
PELGROM (PELGRIMSTRAAT 15,ANTWERP) 03/234-08.09
12:00〜 |
|
CAFE DEN ENGEL (GROTE MARKT 3,ANTWERP) 03/233 12.52 |
目次
|
Copyright(C) T.Nawa 1999