ベルギービールの守護神・聖アルノルドス(聖アルノー)
ベルギービールの守護聖人として有名な聖アルノーArnou(アルノルドスArnoldus)ですが、ビールに関わる同名の聖アルノーが複数いて、混乱を生じています。
 『世界ビール大百科』によると、ベルギーのビール守護聖人は、アウデナールデのセント・アルノー(St.Arnou de Oudenaarde)で、もう一人のフランス・メッツの司教だったセント・アルノーとは、よく混同されると書いてあります。
 フランス・メッツの司教のアルノーについては、
セント・アルノーは醸造家の守護聖人でとして広く知られている。彼は、580年にフランスのトゥールに生まれ、612年にメッツの司教に就任した。15年後に司教職を退き、メッツを離れて修道院に移った。640年にその修道院でこの世を去ったが、翌年メッツの市民はアルノーの遺体を自分たちの町の墓地に埋葬したいと願った。そこで遺体がメッツに向けて運ばれたが、道中で奇跡が起きた。運搬人たちが、疲れ、喉も渇いたので、ある町で休憩をとった。ところが、あいにくとビールはビア・マグ1杯分しかなかった。にもかかわらず、飲み干しても飲み干しても、ビア・マグからビールが湧き出したのである。アルノーの遺体を運んでいる人たち全員の喉の渇きを潤すまで、ビアマグの中のビールはなくならなかたという。
と書いてあります(p332-333)。
 もう1人は、フランスの町ソワッソンのセント・アーノルドです。この人物については、
フランスのソワッソンのセント・アーノルドは、ホップ栽培者の守護聖人とされている。伝説の伝えるところによると、彼はペストが流行したとき、自分の十字架を醸造釜の中に鎮め、水を飲まずにビールを飲むように民衆に教えた。その結果、ペストはぴたりと鎮まった。
と書いてあります(p332)。
 最後に、アウデナールデのセント・アルノーについては、
ベルギーのビール守護聖人で、”アウデナールデの武将”ともいわれた。11世紀のフランダースの戦いに参加し、日照り続きで水に飢えた兵隊たちに代わり、「神よ、どうか冷えたビールを恵み給え」と祈ったことで知られている。アルノーが祈り続けている間、洗浄に運ばれた水瓶の中には冷えたビールがこんこんと湧き出ていたという。
と書いてあります(p8)。
 さて、マイケル・ジャクソンの『地ビールの世界』から聖アルノーに関わる部分を引用すると、
シャンパンで有名なランスの町に近いソワッソンに、サン・メダールという修道院があります。11世紀にそこの修道士で、後年司教になった聖アルノーは、ベルギーのビール守護聖人とされています。聖アルノーは、オーステンドとブルージュの間にあるアウデンブルグ修道院を創立しました。(彼はまた、アウデナールデとも結びつきがあります)。ペストが流行した時代に、聖アルノーは自分の十字架を醸造釜の中に沈め、水を飲まずにビールを飲むよう民衆に教えました。こうしてペストは奇跡的に鎮まったといわれています。
と書いてあります(p12)。
 マイケル・ジャクソンの本の記述が正しければ、『世界ビール大百科』の「ソワッソンのセント・アーノルド」と「アウデナールデのセント・アルノー」は同一人物のようにも読み取れますが、逸話が一致しません。時代はともに11世紀の人物です。ますます分からなくなってきましたが、醸造所の人たちは、1040年にアウデンブルグ修道院を創立した聖アルノーがベルギーのビール守護聖人として、醸造所に神棚のように祀っています。

ベルギーのビール守護聖人、聖アルノー像。
(ストラッフ・ヘンドリック醸造所)
1040年アウデンブルグに修道院を創立した。
◆醸造所にある聖アルノルドス像◆

Domus

Achel

De Koninck

Bosteels

ビール醸造博物館 1F

ビール醸造博物館 B1
ビール醸造博物館では聖アルノー像の販売もしています。
聖アルノーが持っている棒は、ビール醸造時に使用する道具です。
聖アルノーが持っている道具は、今は展示品
(左:ビール醸造博物館、右:デ・コーニンク醸造所)
フリアート醸造所では今も使用しています。
Augustijn Grand Cruのラベル
僧がこの道具でビールを醸造しています。
Hoegaaden Whiteの青い紋章のような部分に
この道具が描かれています。
ブルージュにあるグーデン・ボーム醸造所のSteenbrugge
最後に、聖アルノー像は、赤坂のボア・セレストにも展示してあります。興味ある方は、ぜひお店に行って、店長の入手苦労話を伺ってみてはいかがでしょうか。

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