前 | 次 |
ブルージュの旧市街には、単一銘柄ストラッフ・ヘンドリックを醸造するストラッフ・ヘンドリック STRAFFE HENDRIK醸造所、及び、BRUGSE TRIPELやアベイのSTEENBRUGGEなどを醸造するグーデン・ブーム GOUDEN BOOM醸造所があり、どちらも見学が可能である。今回我々は、ストラッフ・ヘンドリック醸造所を見学することにした。
ストラッフ・ヘンドリック醸造所は、ベギン会修道院とは運河を挟んだ向かい側に面している。
ただし、醸造所に辿り着くには、通りをもう一回りしてこなければならない。建物は3階建で、
1階のアーチをくぐると、この醸造所が経営するカフェの中庭になっている。カフェの扉を開け中に入ると、
我々同様醸造所を見学しようという年配のイギリス人夫妻が待っていた。この醸造所の娘さんと思われるインゲさんの案内(説明は英語)で、我々とこのご夫妻の4人で見学することになった。
はじめに醸造所の歴史であるが、ブルージュ市の1564年の古い記録に、この場所にDE
MAENE醸造所 という醸造所があったことが記録されている。
現在の建物は、1856年にストラッフ・ヘンドリック醸造所の前身
ハルヴェ・マーン DE HALVE MAAN醸造所が創業した時のもの。ハルヴェ・マーンHALVE
MAANは、半月(HALF MOON)の意で、醸造所の入口にも創業者の
HENRI MAESの名と供に半月と顔の組合せのデザインがレリーフとして壁に残されている。1988年に、現在の所有者リヴァRIVA
グループが買収して以来、複数あったビールの種類を、ストラッフ・ヘンドリック一つにし、唯一のビールとして醸
造を続けている。創業時の半月のデザインは、現在のビール瓶のラベルに残されている。
カフェの入口を入るとすぐ右側に見えていた醸造設備が、1968年に導入された新しい設備で、現在この設備で、破砕、糖化、
煮沸、醗酵が行なわれている。奥には、 瓶詰機械もある。
次に案内されたのは、以前使用していた醸造設備がある部屋の数々。これらの部屋へは頭に気を付け、狭い階段、急な梯子な
どを登り下りしながら行く。最初は、小規模な醸造関係の設備や小道具がある部屋。手動の瓶詰め器、コルク打栓器など昔の設備
を説明しながら、醸造工程を身振り手振りを交えながら説明してくれた。サンプルのホップ(1種類)や麦芽(4種類)、
ハーブ・スパイスの瓶(2瓶)も見せてもらった。*4
*4マイケル・ジャクソンによると、使っている麦芽は、 ピルスナーモルト、クリスタルモルト、ペールモルトの3種類という。また、ホップは、ドイツ産のノーザンブル ワーとザーツであるという。(マイケル・ジャクソン著「地ビールの世界」P271参照)
屋根裏部屋の1つは、製麦部屋になっていて、レンガの床に細い穴が開いている。隣の屋根裏部屋は、
銅板で内面を覆った冷却槽になっており、レンガ造りの三角屋根の真ん中には、天に向かった大きな穴が開
けられ、扉がついている。この扉を開けると、糖化した麦芽液の上に屋外の酵母が降り注ぐようになってい
る。まるで、ランビックビールの製造方法のようだが、昔はこうした方法で、ビールを醸造していたのである。
この部屋から一度外へ出ると屋上であった。ブルージュの街並みを一望するには、マルクト広場にある鐘
楼に登るとよいが(高さ83m366段のらせん階段に挑戦)、この醸造所の屋上から見た眺望もなかなかのものである。
遠くに鐘楼や聖母マリア教会などがレンガ造りのブルージュの街並みから突き出て美しい
。
さて、再び建物の中へ入ると、1928年製の蓋がない開放型醗酵槽(10機ほど)や、その真下の部屋の同年製の貯蔵タンク(
1本の容量3,200L、10本ほど見えたが全部で48本あるようだ)を見学の後、様々なビールに関するコレクションを
拝見する。ビールグラスや缶ビールが陳列してあり、特にビールコースターのコレクションは、壁一杯に国別に
整理されて貼られている。同伴したイギリス人ご夫妻は、持参したコースターをインゲさんに提供し、彼女はそ
の場で壁に貼っていた。どうもこのコレクションは、この醸造所を訪れた者が持参したり、後日郵送したりする
などして自然に集まったもののようだ。缶ビールコレクションの壁では、一部をくりぬいて、高さ50pほど
の聖アルノルドスSt.Arnoldos像を置いていたが、この醸造所もビールの守護神として祭っている。
最後に、はじめのカフェへ戻ってきた。カフェはBROUWEIL
TAVERNEという名で、ここで、ストラッフ・ヘンドリックの樽生を味わう。
このビールはアルコール度数6度のビールで、普通のビールよりストラッフ(ストロングの意)なのでこの名が付い
たという(1982年以来の製品)。ゴールデン・エールとして典型的なタイプ。醸造はこの1種類のみであるが、製品としてはボトル
(大瓶と小瓶)と樽生の2種類となり、味わいもやや異なるとされる。
この醸造所を再び訪れるときは、まだ世界でも珍しい日本の地ビールのコースターを持参して行け
ば、きっと非常に喜ばれるであろう。
目次
|
|
Copyright(C) T.Nawa 1999 (bugyo-nawa@geocities.co.jp)