KEIZER KAREL 1500-2000
ミレニアム2000年は、16世紀ハプスブルク帝国最大版図を誇ったカール5世生誕500年を記念する年でした。カール5世(1500-1558)は、ベルギーのゲント生まれで、メッヘレン育ち。ベルギーでは、さまざまな展覧会やイベントが行われました。
KEIZER KAREL 1500-2000 イベントの各種パンフレット

グーデン・カロルス Gouden Carolus

昔のラベル
ブリュッセルの北24kmにあるメッヘレンには、ヘット・アンケル醸造所(グーデン・カロルス醸造所と称することもある)があり、その醸造所が醸す有名なビールに「グーデン・カロルス Gouden Carolus」があります。
 このビールは、スパイスとしてオレンジピール、コリアンダーが加えられており、瓶内二次発酵により、アルコール度数は7.5%〜8%になります。水色はダークな赤茶色で、フルーティな芳香、ほんのちょっぴり酸味を感じたあと、複雑な味わいを感じます。酸味は、醸造過程で開放式の冷却槽を使用していることに由来していると思いますが、年々酸味がおとなしくなってきており、逆に洗練されたドライな感じが出てきています。初めてベルギーに行ったおり飲んだ「グーデン・カロルスの樽生」には、酸味と甘味のバランスの悪さに驚いたものですが、その時と比べると現在のビールは別物で、大変お勧めできるものです。
2000年に飲んだ時のラベル
 さて、ビール名は、「黄金のカール」という意味で、このカールが誰なのか2説ありました。
 一人は、西暦800年「カールの戴冠」で有名なフランク王国カロリング朝のカール大帝(カール1世、742〜814、位768〜814。ワイン好きなら、コルトン・シャルルマーニュの畑で有名なシャルルマーニュ大帝といったほうがピンと来るでしょう)とする説。
 もう一つは、ハプスブルク家の神聖ローマ皇帝カール5世とする説です。
 二人ともヨーロッパ史上、重要な人物です。
 ビールのラベルからでは、どちらとも言えませんが、メッヘレンの町との関係から、カール5世とする説が適切と考えていました。
2000年後半から使用されているラベル

グーデン・カロルス・キュベ・ヴァン・ド・ケイゼル

 ヘット・アンケル醸造所は、カール5世生誕500年を記念して、特別なビールを醸造しました。その名は、「グーデン・カロルス・キュベ・ヴァン・ド・ケイゼル(Gouden Carolus Cuvee Van De Keizer)」。ケイゼルはカイザー(皇帝)です。
 このビールが醸造されたことにより、カールが誰なのかはっきりしました。特別なビールは、カール5世の誕生日に因んで、毎年1回2月24日に限定で仕込まれるということです。
Gouden Carolus Cuvee Van De Keizer(8.5% 75cl)
通常のグーデン・カロルスに対し、より厳選された最上級のホップとモルトを使用しており、8.5%というより高いアルコール度数となっています。
 このビールは、年1回の仕込み、瓶内二次醗酵、長期熟成ということで、ヴィンテージがあります。初ヴィンテージは500年記念の2000年かと思いきや、2000年に間に合うように1999年に醸造し2000年に発売したものが最初のようです。


1999年12本箱入り
日本には、2001秋にこのビールが初めて輸入されましたが、2000と2001の両ヴィンテージが混在していたようで、たまたま、この両ヴィンテージを飲み比べる機会に恵まれ味わいを比べることができました。
 通常品と比べると、当然ながら味わいはより深いコクを感じるのですが、2001年ものは際立った芳香があり、鼻の奥まですうっと香りが引き込まれていきます。味わいは、オレンジピールをはっきり感じ、スパイシーでフレッシュ感があります。それに比べ、2000年物は、香りが立たず、飲んでも味わいが鈍よりしていましたが、開栓してからおよそ30分くらい経って、その真価を発揮しだしました。まろやかなコクと濃密な舌触り。これはビールでなく、ワイン。それもポートワインを連想させます。色も赤みがかった濃い茶色です。マディラワインも連想されます。
 ストレートな美味しさの2001年物とゆっくりと味わいが増してくる2000年物、どちらも甲乙つけがたいものがあります。また、2001年物も熟成させると2000年物と同じような味わいになるのでしょうか。楽しみです。

ベルギービールの魅力
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