エグモント
EGMONT(クロンベ醸造所)

エグモントといえば、音楽好きであればベートーヴェンのエグモント序曲を思い起こしますし、その基となったゲーテの戯曲「エグモント」を思い出すかもしれません。

ゲーテの戯曲の題材となったエグモントは、実在の人物(1522年〜1568年)です。
 エグモント伯ラモラルは、1557〜58年にかけてのフランスの対スペイン戦争に参加して武名をあげました。カール5世退位(1555年)後のネーデルランドは、フェリペ2世による新教徒への宗教迫害が強まって来ます。エグモントは、オランダにおける新教の普及と、ネーデルランドの独立をはかり、1561年〜64年にかけて、オラニエ公ウィレム(後のオランダ王ウィレム一世)およびホールネ伯とともにスペイン軍に抗しました。

LAMORAL(ヴァン・デン・ボッシュ醸造所)
フェリペは一万人の軍隊と執政に匹敵する権限をアルバ公に与えて、ネーデルランドに派遣します。武勇で知られるアルバ公は支配の方法も強引で、1567年8月、フランドル、ブラバントの各都市に軍を進駐させ、反逆に加担した主要人物を逮捕しました。この中にはホールネ伯やエグモント伯などの高級貴族も含まれていました。アルバ公は反逆者を裁くために、「血の法廷」と呼ばれる騒乱裁判会議を開催し、多数の容疑者を捕らえて死刑を宣告。エグモント伯、ホールネ伯は、1568年6月にグラン・プラスで処刑され、また、5年間に処刑された容疑者は6000から8000人に上ると言われています。これを契機に1568〜1648年にかけて、オランダ独立戦争が起こることになり、この過程で、カトリックが多い南部諸州(現在のベルギー)は脱落し、ベルギーの独立は、1831年まで待たねばなりませんでした。
グランプラスで処刑されるエグモント

ゲーテ(1749〜1832)はこの史実をもとにして、エグモントを主人公にした悲劇を書きました。そのあらすじは次のとおり。

スペインの圧政から逃れて独立しようとする、16世紀のオランダが背景となっていて、フランドルの領主エグモント伯は、その独立運動の指導者として登場する。スペイン王フィリップ2世は、その弾圧のためにアルバ公をさしむける。エグモントは、親友のヴィルヘルム・フォン・オラーニエンの忠告を聞かないで、無謀にもアルバ公に直言をしたために、捕らえられたうえに、死刑の宣告を下される。愛人のクレールヒェンは、必死になってエグモントを救おうとするが、ついにその力はおよばず、自ら毒をあおいで死んでしまう。その断頭台に引かれる寸前のエグモントは、ちょっとまどろむが、そのときクレールヒェンの幻影が現われて、彼を祝福し、目覚めたエグモントは強い足どりで刑場へと向う。という物語になっている。

ベートーヴェンは、1809年〜10年にかけて、いろいろな工夫をこらして、原戯曲の指定どおりに、序曲をふくめて、10曲の劇音楽を作りあげた。初演1810年5月24日。

さて、ベルギービールの銘柄にも、この英雄を取り上げたビールがあります。それが上に掲載したラベルです。クロンベ醸造所「EGMONT(エグモント)」とヴァン・デン・ボッシュ醸造所の「LAMORAL(ラモラル)」の2種類。
 
ブリュッセルのプチ・サブロン広場にはエグモント像があり、近くにエグモント宮殿、エグモント庭園などエグモントの名を冠した場所もあります。市民にエグモントの名は広く知られているようです。
なお、クロンベ醸造所があるゾッテヘムZottegemの教会の地下に彼の墓があり、教会前にはエグモント像が立っています。

プチ・サブロン広場のエグモント像

ゾッテヘムの教会とエグモント像
(参考)http://www.zottegem.be/toerisme/engels/egmont.html(英語)

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