前 | 次 |
第6回ベルギー王国ビール探訪記(3)
|
||||||||||||||||||||||||||||||||||||||||||||||||||||||||||||||||||||||||||||||||||||||||||||||||||||||||||||||||||||||||||||||||||||||||||
Au Laboureur オー・ラブロー
このカフェは以前は無名のカフェであったが、最近のTim Webbの著書にも取り上げられるようにもなった。ミディの朝市見学の際のトイレ代わりに利用するには、丁度よい立地である。そのためかどうか、このカフェのトイレにはトイレおばさんがいて、チップが必要である。 このカフェのメニューには取り立てて珍しいビールはないのであるが、なんと言ってもランビックビールの新鮮な樽生が飲めることが嬉しい。 メニューの樽生にあるLambicはグラスのほか、1/2リットル、1リットルから選ぶことができる。1/2リットルと1リットルは昔ながらの陶器のピッチャーで出てくるので雰囲気十分。中身はTimmermansのもの。甘味を付けているタイプのグーズであるが、なんともフレッシュで何杯でもお代りができそうである★★★☆。
なお、あんまり美味しかったので、2本ほど購入した。1本3ユーロだと思うと安い買い物である。 この日の出発時間までまでちょっと間があったので、私は皆と別れ、街を散策しながらホテルに戻った。
出発さて、今回のマイクロバスの運転手は山田さんではなく、日本語が達者なベルギー人でフランドル地方出のヤンさん。日本人向けのツアーコンダクターを目指すということで、その本格的な初仕事前に我々と同行するとになった。今までワロン地方ののフランス語については山田さんも堪能なので苦労せずに旅行できたが、フランドル地方のオランダ語圏では結構手を焼いていた。今回オランダ語圏でも不自由なく旅行できたのはヤンさんのお陰である。ホテルのロビーに新しく集合したのはヤンさんだけではない。もう一人、駐ベルギー公使の門司さんである。門司さんは日本酒を海外にも広めようと活動している日本酒輸出協会の役員もされているが、月刊「東京人」1995年3月号のベルギービール関連の記事ににおいて、ベルギービールのラベルコレクターとして登場し、ブラッセルズ神田店のカウンターでベルギービールを味わっている姿が掲載されているほど、ベルギービール通の方でもある。ちなみにカウンターの中にいる人物は滝沢店長である。 こうしたメンバーを加え、マイクロバスはホテルを出発した。
Brouwerij Kerkom ケルコム醸造所ブリュッセルから東に約70Km。近くの町はSint Truidenシント・トルィデン。シント・トルィデンを中心とするこの地域はベルギー有数の果物地帯で、洋ナシ、サクランボ、リンゴの産地である。 車で醸造所に向かう途中でも果樹園と思える風景がずぅ〜と続き、こんな場所に本当に醸造所があるのかと疑いたくなる。畑の中の広い一本道を進んでいくうちにちょっと家々が目立ち始めたなと思ったところで、醸造所に到着した。 案内されて建物の中庭に入るが、そこで見たものは屋根の稜線が波打つ様にゆがんだ建物である。ヨーロッパの田舎の農家という雰囲気で、1878年創業当時のままの建物らしい。早速見学をさせていただく。 ビールの種類は以前はBINKという銘柄1種類のみであったが、Marc Limetさんが引き継いでからはその種類を増やしているが、年間生産量は340ヘクトリットルというとても小さな醸造所である。
寒い上に、醸造所のゆがんだ瓦葺きの屋根を建物の中から見上げると、明るい光が漏れている。ランビックの醸造所のように隙間があるのである。道理で建物の中もとても寒い。しかし、この隙間から風が入ってビールを冷やすのに都合がよいということである。 醸造所とは別棟には醸造所経営のビア・カフェがある。室内はストーブで暖房されていて暖かい。建物が古い分、ビアカフェの雰囲気もアンティーク調である。古い陶器のビアマグやグラス、アンティーク道具や変わった形のグラスなど飾られていた。メニューにはビールだけでなく料理も掲載されていたが、この日は料理は出来ないという。お昼時でちょっとお腹が空いていたのだが、ビールで我慢。カフェのカウンターにはビアサーバーがあるが、閑散とした時期であるのでビー樽は繋いでいないのであろう。Marc Limetさんは、グラスを並べると、ラベルの貼っていないボトルを取り出してグラスにそそぎ出す。
4本目は、Winterkoninkske。Winterkoninkskeとはラベルに描かれた小鳥の名前。アルコール度数が8.3%あるウインタービールである。はっきりとしたオレンジピールを感じ、ほかにも不明のスパイス味。コクもあるがなめらかな喉越し。7種類のモルトを使用しているということで、そのうち1つがオートミール。いかにも納得。★★★★+。 最後はAdelardus Trudabdijbier Bruin。近くにある大きな町であるSint Truidenシント・トルィデンの大修道院にちなんだビールである。この修道院は現在は廃墟となっていて、修道院聖堂の塔が残っている。ラベルにもその塔が描かれている。Sint Truidenシント・トルィデンの町は、Sint Truidenシント・トルィデン(仏名Saint Trondサン・トロン)という聖人が7世紀にここに修道院を設立したことから発展した町である。最盛期には全長100mの身廊を持つ聖堂があり、西正面には巨大な塔が建っていたという。なお、ベルギーの世界遺産に1998年登録されたフランダース州の13のベギン会修道院Flemish Beguinagesのうち、1つがSint-Truidenシント・トルィデンにある(Beguinage de Sint-Truiden)が、廃墟の大修道院とは別。 Adelardusは、修道院長の名。麦芽の甘味を残した感じでコクがある。苦味も有り、スパイシーだが特にジンジャーを感じる。泡立ちもよい。★★★★。このビールはbruinだったが、他に飲んでいないビールにAdelardus Trudabdijbier Tripel(9%)がある。
こうしたビールのプロデューサーはベルギーには多いようで、一番有名なの人はご存知ヒューガルデン・ホワイトを醸造したピエール・セリスさんである。アメリカ・テキサスから帰国後、1998年にDe Smedt醸造所からGrottenbierグロッテンビールを発売したが、現在の醸造元は、St.Bernardous醸造所に変わっている。こうしたプロデューサー開発のビールは醸造所オリジナルのものではないので、いつのまにか別の醸造所で醸造されていることがある。また、醸造所が潰れても、別の醸造所が潰れた醸造所の銘柄を引き継ぐことが、ごく普通に行われている。 さて、ビールは5種類いただいたが、食事をとることが出来なかったので、我々は醸造所を後にして再びブリュッセル市内に戻ることにした。
昼食車での移動であるが、さすが駐ベルギー公使の門司さん。ブリュッセル市内についてはめちゃくちゃ詳しいので、日本から訪ねてきた我々をもてなそうと、車窓から見える建物、風景についていろいろ説明をしてくれる。EUの情勢なども含め様々の解説付きの観光ツアーのようで感謝!感謝!お昼の食事処を探すが、日曜日ということもあり、営業している店が見つからない。La Danse des Paysansは、もとModer Lambicの支店があった場所にあるレストラン。しかし、定休日のようである。
ベルギーにも東洋人は多く住んでおり、中華系の華僑のチャイニーズレストランはよく見かける。ベトナム系のベトナム料理店もあってもそんなに不思議ではない。たまには、ヨーロッパの人種の坩堝を体験するのもいいだろう。
料理も特段どうしても食べたいというものがなく、とりあえず私は焼きソバを選んでみたが、他にはビーフンを食べる者など。
郊外のカンブルの森をドライブして時間調整。日曜日ということもあって、人出が多い。車道も通行止めや一方通行などで同じ場所をくるくる回る。ブナ林で夏は緑豊かなのであろうが、冬のこの時期では夏を想像するだけ。なんとなく時間が過ぎたので、いよいよレストランDE RARE VOS(ドゥ・ラール・ボス)へ向かう。
|
|
|