第4回ベルギー王国ビール探訪記(15)

6日目(2)
4.デ・カム De Cam
5.ハレの街 Halle

デ・カム De Cam

次の目的地は、デ・カムDe Camである。ゴイックGooikという小さな村にあるのだが、どのあたりにあるのか、運転する山田さんも感に頼りながらの運転で、途中道を聞きながら、やっとのことでたどり着いた。 

デ・カムは、新しいランビック・ビールのブレンダーである。1997年6月に立ち上げ、1998年10月に最初のグーズが出来上がったという。ランビックをブレンドして1年、1年物のグーズが誕生ということである。ブレンダーの名は、ウィレム・ヴァン・ヘレヴェッヘWillem Van Herreweghenさん。

デ・カムのビールは、醸造所と隣接する「フォルクスカフェ・デ・カムVolkscafé "De Cam"」で飲むことができる。山田さんは、ヘレヴェッヘさんと事前に見学の約束をしていたのだが、ヘレヴェッヘさんは出かけているという。我々はとりあえず、カフェでデ・カムのランビックを飲んみながら彼の帰りを待つことにした。
 ちょうど、このカフェの建物の2階が楽器博物館になっていたので、そこを見学したりで、時間を過ごすことができた。この楽器博物館には、西洋の楽器のほか世界の民族音楽の楽器やら、メガフォン、子供のおもちゃの楽器など博物館に納めるにちょっとという変り種もあって結構楽しめた。
さらに、カフェに隣接している建物は、この村の警察である。


隣は警察

カフェと楽器博物館

楽器博物館の内部

子供のおもちゃまで展示してある。

ビールのメニューに載っているデ・カムのビールは3種類。

3種類のうち、グーズ・デ・カムだけが大瓶からグラスに注がれた。グーズはランビックをブレンドして瓶内2次発酵を経て味が調整されるものなのだから当然である。ランビックとクリーク・ランビックはハンドポンプによる樽生である。いずれも素晴らしい味わいである。とくにグーズは泡立ちもよく、グレープフルーツの香味がする。


De Camのビールメニュー

ハンドポンプのサーバー

De Cam Geuze

De Cam Kriek

待つこと30分から1時間程度であろうか、ヘレヴェッヘさんが奥様と一緒にお帰りになった。いろいろ話をうかがったあと、ヘレヴェッヘさんが取り出したのは、バグ・パイプ。組み立てを終えて、我々に演奏を披露してくれた。奥様はカスタネットが担当である。さすが楽器博物館の館長も勤めるだけある。珍しい楽器の生演奏を鑑賞したのち、向かいにあるデ・カムのブレンド工場の見学となった。

 ブレンドするランビックは、初めはリンデマンスLindemansとブーンBoonを購入していた。その後、ドリー・フォンテネンがランビックの醸造を始めたので、それも加えて3つのランビックのブレンドとなっているという。ジラルダンを使用していないのが、不思議。
 他にも協力者がいて、資金的には大手のパルム醸造所が関与している。パルムの社長は、衰退気味のランビックビール、すなわち「自然発酵」という伝統を残さなければならないと考えて、デ・カムの事業に協力しているという。ほとんど趣味の世界である。

 ブレンダーだからビールを醸造していない。正確には建物は醸造所とは呼べないのだが、建物内に醸造設備がない分、器具類があまりなく、シンプルである。ブレンドするための器具と瓶や樽に詰めるための器具しかない。

 デ・カムが使用する樽は、チェコのピルスナー・ウルケルの樽である。この樽には、ピルスナー・ウルケルの焼印が押してあり、昨年、ドリー・フォンテネンで見かけたものと全く同じものである。しかし、チェコで使われているピルスナー・ウルケルの樽は、4000リットルの樽である。その100年以上使用した4000リットルの古樽を解体して、あらたに1000リットル用の樽に作りかえたものを使用している。だから、デ・カムの樽は他のランビック醸造所の物と違って、新しい、きれいな樽だなあと感じる。樽の作りかえの工程を説明する写真が飾ってあった。

 カゴには、ミレニアム・グーズが並んでいた。これは、ドリー・フォンテネンとデ・カムの共同作品であり、2人の名前が瓶に直接プリントされている。デ・カムのビールには、ラベルがない(翌年には、ラベルを作成したようである。)。ビールを販売するというので、1本190BFで欲しい人は購入した。

ブレンドの設備とピルスナー・ウルケルの樽が並ぶ

樽内でブレンドしたランビックが再発酵中

説明するヘレヴェッヘさん

ミレニアム・グーズ

1998.2瓶詰めの初期のグーズ

美味しいランビックをいただいたあと、我々は、隣の警察に捕まらないように、次の目的地のハレを目ざした。

【データ】 Volkscafé De Cam (Dorpsstraat 67, 1755 Gooik) Tel:02/532.21.32

ハレの街 Halle

ハレの町もペヨッテンランドの真中に位置する町である。かってVander Lindenという醸造所がハレの町にあり「Vieux Foudre」という銘柄でランビックを出していたが、廃業してしまった。それでもこの街には、ランビックビールを飲む伝統が残っているのではないかという思いで寄ってみた。

モニコMonico(Maandagmarktにある)という店で50種類のビールを売っているという情報があったが、いざ行ってみると、ビールを販売している店ではなくなっていた。

トライアングルTriangel

トライアングル Triangel

この街で、Tim Webbの本に出ているカフェといえば、トライアングルTriangelの1軒だけ。65種類のビールがあるというが、ネオン管でできた店の看板や明るい雰囲気の店内の様子からして、「本当にランビックビールがたくさんあるんでしょうかねぇー」という山田さんの一声で、入るのを躊躇った。
 ハレの街は思ったよりも大きい街で、メインの通りを散策しながら、チョコレートやお土産などを購入した。チーズ店では、ベルギー製の修道院チーズなどもあって、見る目を楽しませてくれた。

◆ブリューゲル・ロード(Bruegel Route)
 ハレの街を散策中、建物の壁に案内標識を見つけました。 この地域全体に「ブリューゲル・ロード」という観光ルートが整備されており、その標識である。ピーテル・ブリューゲル(大ブリューゲル1528〜69)は、当時では例外的に名もない農民達とその生活を好んで描いたので「農民のブリューゲル」と呼ばれた。彼の作品の舞台となったところが、ほぼペヨッテンランドと一致し、そこに暮らす人々の生活は16世紀以降も変わっていないようにも見える。
このルート上には、ランビックビールを醸造するメーカーが多数あります。「〜beek」と付く町の名が多いが、このbeekとは「小川」の意です。ゼナ川に注ぎ込む無数の小川がこのあたりにあり、この地域だけにすむ野生酵母が生息しやすい環境を作っている。

 
【データ】 Triangel (25 Basiliekstraat ,1500 Halle) Tel:02 361 3726
http://www.proximedia.com/web/mamo.html

(つづく)


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