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ビール関連情報(4)
日本に輸入されている樽生のベルギービールといえば、ヒューガルデン醸造所(旧:DE
KLUIS醸造所)のヒューガルデン・ホワイトHOEGAARDEN WHITEが唯一で、 それ以外のベルギービールの樽生ビールを日本で味わうこうとはなかなか難しい。そこで、今回のベルギービールの旅では、日本では味わう機会のない樽生ビールを積極的に飲むように努め、日頃飲んでいる同銘柄の瓶詰めビールとの味の違いを確認してみることにした。
ベルギー滞在2日目、中世の街並みが残る歴史都市ゲントのビア・カフェ、トロルケルダーでこの旅初の樽生ビールにめぐりあった。
それが幸運にもあのトラピスト・ビールのウエストマレ・ダブルWESTMALLE DUBBBELの樽生だった。運ばれてきたグラスに鼻を近づけると、香り
はまさにあのウエストマレ・ダブルのブラウン系の香ばしさを感じる。しかし、一口飲んだとたん、これは日頃飲んでいる瓶詰めの
ウエストマレとは全く別の風味のビールだと思った。まず、フレッシュさを感じるのは樽生ビール共通のことであるが、いつも感じる甘味と深いコクがあまり感じられないのである。それに代わってなんともさわやかな清涼感があり、味のくどさがない。この樽生ビールは、日頃飲んでいる瓶詰めのウエストマレとは違う意味で旨いものだった。また、ブリュッセルのビアカフェ、シェ
・ムーデル・ランビックで飲んだデリリューム・トレーメンスDELIRIUM TREMENSの樽生も、瓶詰めのものとは全く異なる味わいに驚嘆した。
デリリューム・トレーメンスの味といえば、普通の瓶詰めでは、アルコール度数が高く、甘味も強いタイプのエールであるが、ここで飲ん
だデリリューム・トレーメンスの樽生は、甘味が全くなく、フレッシュで、ホップの香りが高いスパイシーな味わいで、これも瓶詰めビールとは別物と言わざるを得なかった。
こうした樽生ビールと瓶詰めビールとの味の大きな違いは、ベルギービールの醸造過程において瓶内2次発酵(3次発酵の場合有り)
が行われていることに起因している。つまり、ベルギーの上面発酵ビールの多くが、醸造タンク内で1度発酵を終えた麦汁に対して、
瓶詰め時に新しい酵母と糖類が加えられ、瓶内で再度発酵させられているのである。したがって、当然瓶内発酵を行わないでそのまま樽詰めした生ビールは、瓶詰めビールとは風味が異なってくるのである。
我々は、今回のベルギー滞在中、約20種類の樽生ビールを味わったが、どれもが新鮮な清涼感に満ち溢れていて、旨いビールが多かった。印象に残った上記以外の樽生ビールをあげると、キューベ・デ・コーニンクCUVEE
DE KONINCKの樽生、スコッチ・シリーSCOTCHSILLYの樽生などは瓶詰めのものよりはるかに旨かったし、カンティヨン醸造所のものと思われるLAMBIC LE VERRE(スピネコプケにて)もブレンド熟成前のフレッシュさと木樽香味の強さが印象的だった。また、ブリュッセルのビール醸造博物館のオリジナル樽生ビールも、ダーク、ライトともフレッシュで、本当に旨いビー
ルだった。 長期熟成に耐えるベルギービールも確かに興味深いが、やはり、日本酒のしぼりたて新酒やワインのヌーヴォーと同様に、樽生ビールは魅力的である。
(与力)
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