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ベルギービールが輸入されるまで
ベルギービールの輸入の過程
◆ベルギーとわが国とでは味わいが異なる
 ベルギーまでビールを飲みに行き、そこで感じるのは、ベルギーで飲むビールはほとんどがスムーズな喉越しであること。さまざまなスパイスを加えていようが、アルコール度数が高かろうが、ノン・フィルターであろうが、みんなスムーズで、意外と軽く喉を通り越してしまう。旨いのである。
 しかし、わが国で味わうベルギービールを語るとき、味わいの複雑さばかり強調されているようにも思える。飲み易いベルギービールは、味が薄く、軽く、造りが単純で、本来のベルギービールにあるまじき存在として敬遠されているようにも感じる。
 では、ベルギーで味わうスムーズ、まろやなかな喉越しのビールと、複雑で重厚なビールとでは、どちらが本当のベルギービールなのであろうか。
 同じ銘柄を、比べて味わえば一目瞭然。当然ながらベルギーで味わうベルギービールが本来のビールである。
 では、なぜ、味の差が生じるのか。それは、ベルギーからの輸送の問題と捉えることが出来る。ワインの業界でも、この問題は大きな問題で、すでに常識化してきた問題だが、ベルギービールも同じ問題を抱えているのである。

◆輸入の過程
 輸入の過程をまとめてみよう。基本的には船便である。そして、ビールを積むコンテナにはドライとリーファーとの2種類あって、費用の安い鉄板1枚のドライ・コンテナが主流である。ワインにおいては、「リーファーコンテナ輸入」と記載されているワインが増えているのは、良く目にするところである。
船便(国際海上コンテナ) 航空便(エアカーゴ)
1.醸造所(梱包)

2.内陸輸送

3.港の倉庫(輸出通関・船積)

4.船(海上コンテナ輸送)=約40日

5.日本の港のヤード・保税倉庫
(陸揚・輸入通関)

6.内陸輸送

7.輸入元倉庫
---輸入元営業所の倉庫---
---問屋の倉庫---

8.酒屋、ビア・カフェ

9.消費者
1.醸造所(梱包)

2.内陸輸送

3.航空貨物集積所(輸出通関)

4.飛行機(エアカーゴ)

5.日本の空港のヤード・保税倉庫
(輸入通関)

6.内陸輸送

7.輸入元倉庫
---輸入元営業所の倉庫---
---問屋の倉庫---

8.酒屋、ビア・カフェ

9.消費者

ビールの出荷(梱包・受け渡し)
(カンティヨン醸造所で)

コンテナ
(アントワープ港で)

コンテナの船積み
(アントワープ港で)

船で輸送
(※コンテナ会社の写真から引用)

ブリュッセルの航空貨物集積所
コンテナの種類
(1)サイズ別の分類
 ISO(国際標準化機構)で定められた国際コンテナ規格がある。(ア)20フィート型と (イ)40フィート型が一般的である。
  単  位 20’DRY 40’DRY
外 寸 法 長さ(mm) 6,058 12,192
幅 (mm) 2,438 2,438
高さ(mm) 2,591 2,591
内 寸 法 長さ(mm) 約 5,932 約 12,020
幅 (mm) 約 2,350 約 2,350
高さ(mm) 約 2,385 約 2,385
内 容 積 m3 約 33.0 約 67.0
最大積載荷重 Kg 20,320 30,480
(2)タイプ別の分類
  • (ア)ドライコンテナ(DRY CONTAINER)
    • 一般用途のコンテナの通称。一般雑貨を積載するためのコンテナで、最も多く流通している。
  • (イ)リーファーコンテナ(REEFER CONTAINER)
    • 肉、魚、野菜、果物その他の冷凍貨物を輸送するためのコンテナで、コンテナに冷凍機が内蔵されている。通常のリーファーコンテナでは、プラス25℃からマイナス25℃くらいまでの冷却が可能な冷凍ユニットを装備しており、貨物の輸送温度に応じて任意の温度設定が出来るようになっている。
       ワインやビールの輸送では、当然冷凍ではなく、18℃前後の定温コンテナとして使用する。
  • (ウ)イソキットコンテナ又はインシュレイテッドコンテナ
    • 断熱材、輻射熱防止材を 装備しコンテナ内部の温度が上がらないようしている。
       ドライコンテナのように内部温度は上がらず安定するが、リーファーコンテナ程低温安定ではない。
    • イソキット・コンテナの船底指定輸送
◆理想の輸入ビール
 一般的には、少しでも、海上運賃を安価にして経費を押さえる為にドライ・コンテナの混載貨物(LCL)として他の方の荷物と一緒にコンテナに積合わせて輸入される。
 ビールは、地中海、スエズ運河、インド洋、マラッカ海峡、南シナ海を通って3週間から4週間の長い船旅で日本に到着する。
 この間、途中、赤道を通過するが、コンテナの中に閉じ込めてられているビールは、赤道直下ではコンテナ内部温度は50℃を越え、完全に熱で変質してしまう。
 それを回避するための、つぎに安い手段は、イソキット・コンテナの船底指定輸送というものがある。船の上部は、熱い太陽にさらされ、変質や劣化が著しいが、船底ならば、常に海面下にあって、温度変化が受けにくい状況にあるとの説による。ただし、本当に船底に積まれているのか確認は不可能。
 本当に品質を重視するならリーファー・コンテナか、空輸しかない。
ベルギーから日本までの航路のイメージ

ベルギービールの魅力
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